2.墨田区の生き物について
身近な環境を調べるうえで、そこに生息する動物などの種類や数を調べることは、そこの生態系の変化を知る大切な指標となります。例えば、都市部では、きれいな水辺や森に生息する生き物の種は減少していきますが、都市化に適応しやすい雑食性の生き物は増えていきます。また、外来種などの天敵がいない生き物は、その環境に適応さえできれば、どんどん増加していきます。
○都市化によって減少した在来種(※)の一例
昆虫類:ヘイケボタル、ハラビロカマキリ、シオカラトンボ
両生類:モリアオガエル、トウキョウダルマガエル
魚類:ミナミメダカ、
鳥類:ヒバリ、コアジサシ
ほ乳類:アブラコウモリ
○都市化に適応した在来種の一例
昆虫類:アブラゼミ、チャバネゴキブリ、アオスジアゲハ
鳥類:ハシブトガラス、ムクドリ、キジバト
ほ乳類:ホンドタヌキ
○都市化に適応した外来種(※)の一例
昆虫類:アオマツムシ
両生類:ウシガエル
鳥類:ドバト
は虫類:ミシシッピアカミミガメ
ほ乳類:ハクビシン
※在来種:もともとその地域に生息・生育していた動植物
※外来種:それまで生息・生育していなかった地域に人間の活動に伴って持ち込まれた動植物
◇墨田区内の生き物について(墨田区緑と生物の現況調査報告書(平成31年3月)より)
【市街地】
人家の石積み等を生息地として利用するニホンヤモリやドバト、スズメ、人家や公園の植栽を利用するモンシロチョウやアブラゼミ等、主に都市環境に適応している種が確認されています。また、区全体ではカラスが多く繁殖行動も確認されています。一方、区南部ではウミネコが多く集まっている状況もみられます。
【公園・緑地】
まとまった樹林地や草地のまわりに生息するニホンカナヘビやハラビロカミキリ、樹林地を利用するオナガやツミ等が確認されています。また、池や水路を有する公園では、モツゴやニゴイ、アメリカザリガニ、スジエビ、クロイトトンボ等のトンボ類が確認されています。また、多様な植物が植栽されている向島百花園では、多様な昆虫類や鳥類も確認されています。
【大規模な河川緑地】
河川ではスズキやボラ、マハゼ等、汽水域を生息地とする種を含む魚類の他、カルガモやダイサギ等の水鳥も確認されています。また、汽水域の砂礫ないし砂泥底を生息地とするヤマトシジミや繁殖のために河川と海とを往復するモクズガニ等も確認されいます。その他、ほ乳類ではドブネズミやアライグマ、タヌキが確認されています。
○墨田区内で確認された生き物
分類 | 主な種名 | 種数 | ||
---|---|---|---|---|
合計 | うち 重要種 |
うち 外来種 |
||
両生類 | アズマヒキガエル、ウシガエル | 2種 | 1種 | 1種 |
は虫類 | ニホンヤモリ、ニホンカナヘビ、アオダイショウ、クサガメ、ミシシッピアカミミガメ | 5種 | 3種 | 1種 |
ほ乳類 | タヌキ、アライグマ、ドブネズミ | 3種 | ― | 2種 |
鳥類 | ダイサギ、トビ、チョウゲンボウ、イソヒヨドリ、モズ、イソシギ、カワセミ、オオヨシキリ、マガモ、カルガモ、ユリカモメ、ドバト、ハクセキレイ、ウグイス、シジュウカラ、メジロ、オナガ など | 54種 | 20種 | ― |
魚類 | ニゴイ、ヌマチチブ、アシシロハゼ、アベハゼ、チチブ、ドジョウ、ミナミメダカ、コイ、ギンブナ、モツゴ、タモロコ、ツチフキ、ヒメダカ、マゴチ、スズキ、キチヌ、ボラ、カダヤシ など | 25種 | 9種 | 1種 |
水生生物 | ヒラマキミズマイマイ、ヤマトシジミ、スジエビ、モクズガニ、チゴガニ、ミゾナシミズムシ、エラミミズ、ニッポンドロソコエビ、ヒメタニシ、サカマキガイ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、アメリカザリガニ、ハブタエモノアラガイ、カワヒバリガイ など | 90種 | 11種 | 8種 |
こん虫類 ・クモ類 |
コガネグモ、ヒロバネカンタン、トノサマバッタ、ツクツクボウシ、モンシロチョウ、セイヨウミツバチ、ナミテントウ、ハラオカメコオロギ、オオアオイトトンボ、アオモンイトトンボ、アカボシゴマダラ など | 591種 | 4種 | 1種 |
合 計 |
770種 | 48種 | 14種 |
出典:すみだ区緑と生物の現況調査報告書(平成31年3月)より
◇墨田区内の生き物の生息環境について
墨田区では、ウシガエルやカダヤシ、ミシシッピアカミミガメ等、人により持ち込まれた外来種が確認されています。また、地球温暖化により分布域を拡大しているとされるアカボシゴマダラや、近年、都市部で増加しているとされるアライグマも新たに確認されています。さらに、カダヤシや、ペットの放流によるものと思われるキンギョも確認されており、外来種による生態系のかく乱、生物多様性の損失が心配されています。
※このまちの生き物の種類や数の傾向をみていくと、このまちの生態系の豊かさを見ることにつながります。