1.生物多様性とは
○生物多様性ってなんだろう?
地球上には知られているだけで約175万種の生き物がいて、未発見の種を含めると3,000万種を超すともいわれます。人間も含めたたくさんの種類の生き物すべてが、複雑に関わり合って存在していることを「生物多様性」といいます。
私たち人間の生活は、この生物多様性の中で成り立っています。森は二酸化炭素を吸収し、酸素を作ります。また、降った雨を蓄え土砂の流出を防ぎ、災害から人間を守ってくれています。そして、食べ物やエネルギー、様々な製品の原料など、生活に欠かすことのできないものすべてが、生物多様性がもたらす自然のめぐみなのです。
しかし、今、この生物多様性が人間の暮らしの影響により、失われつつあります。その原因のほとんどが、わたしたち人間の暮らしによるものです。そして、生物多様性に関する問題は、日本だけでなく、世界の環境問題となっています。
○生物多様性(たようせい)に関する問題をひきおこす原因
第1の原因 (開発などの人間活動) |
私たち人間が使う道路や工場、住宅を作るために、生き物のすみかである森林や湿地などの自然が壊されています。 |
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第2の原因 (人間の管理不足) |
雑木林や農地、ため池などの管理が不十分で、そこをすみかとしている生き物が減っています。 狩猟する人が減ったことや利用されなくなった農地が増えたことなどにより、ニホンジカなどが増えすぎて、自然に悪影響を与えています。 |
第3の原因 (人間が持ちこんだもの :外来種や化学物質) |
別の地域から人間によって持ちこまれた生き物(外来種)が、もともとその地域にいた生き物(在来種)を食べたり、追い出したりしています。また、農薬などの化学物質が生き物に悪影響を与えています。 |
第4の原因 (地球環境の変化) |
地球温暖化などの地球環境の変化により、寒い地域にしか住めない生き物など、今までの生活ができなくなり、絶滅の危機にさらされている生き物がいます。 |
○たくさんの生き物が絶滅する危機
生物多様性が失われつつあるなかで、たくさんの生き物が、絶滅の危機にさらされています。日本においても、令和元年度に環境省により公表されたレッドリスト2020(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)では、絶滅危惧種の合計は3,716種となっています。さらに、海洋生物レッドリストの56種を合わせると、合計で3,772種となります。
昔は私たちの身近にいた生き物で、メダカやドジョウといったよく耳にする生き物たちも、今ではレッドリスト2020に載っていて、メダカ(キタノメダカ、ミナミメダカ)は絶滅危惧種、ドジョウは準絶滅危惧種(将来絶滅危惧種になる可能性のある種)です。
ほ乳類 | オキナワトゲネズミ、イリオモテヤマネコ、ラッコ、ジュゴン、アマミノクロウサギ、コヤマコウモリ、トウキョウトガリネズミ など |
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鳥類 | コウノトリ、トキ、ヤンバルクイナ、カンムリワシ、ウミガラス、ライチョウ、イヌワシ、ヒシクイ、アホウドリ、タンチョウ、コアジサシ、サシバ、ハヤブサ など |
は虫類 | ミヤコカナヘビ、アカウミガメ、アオウミガメ、ヤクヤモリ、イイジマウミヘビ など |
両生類 | アマクササンショウウオ、オオサンショウウオ、イボイモリ、ナゴヤダルマガエル、カスミサンショウウオ など |
魚類 | ゼニタナゴ、アユモドキ、ハリヨ、ツチフキ、タナゴ、ゲンゴロウブナ、ホドケドジョウ、ムツゴロウ、カワヤツメ、キンブナ、ミナミメダカ、キタノメダカ、エドハゼ など |
昆虫類 | ベッコウトンボ、クロシジミ、タガメ、ゲンゴロウ、オオクワガタ、ギフチョウ など |
貝類 | マメタニシ、カラスガイ、マシジミ、ハマグリ など |
植物 | シロヤマブキ、ヒメユリ、キキョウ、カワラノギク、キンラン、サンショウモ、デンジソウ など |
※生物多様性が失われる原因について考えると、海や陸の豊かさ以外にも、地球温暖化のことなども関わってきます。